肩関節は上腕骨と肩甲骨から成り、上腕骨の先端の骨頭が肩甲骨のくぼみにはまり込む構造になっています。可動域が広いぶん安定性が悪いのが特徴で、腱板や筋肉、靭帯などの組織が動きを安定させる重要な役割を果たしています。肩関節のバランスが崩れることで様々な症状を来します。
肩関節の痛みで整形外科を受診する患者さんは中高年に多く、腰痛・膝痛とともに非常に身近な問題です。 しかし、肩が痛くなっても患者さん・医療者ともに’’五十肩’’という言葉が使われ、いづれ良くなるイメージからそのまま放置されていることが多いのが現状です。その病名の定義は確立されておらず、医療者側の捉え方で説明や治療法が異なります。実際、肩の痛みの中には保存療法に抵抗性で自然によくならず、しばしば日常生活に影響を及ぼすことがあります。「五十肩」と思われている疾患の中には「いわゆる五十肩」(肩関節周囲炎、凍結肩)のほか腱板断裂や石灰沈着性腱板炎などが含まれます。中でも大きく切れた腱板断裂や可動域制限をきたす凍結肩では保存療法のみでなく積極的な治療が必要なものも存在します。たかが「肩の痛み」と扱われがちですが、されど「肩の痛み」。いずれの症状や疾患でも放置せずに一度受診をして診断や治療・アドバイスを受けることが推奨されます。